J-PlatPatを使った商標検索入門 ~不登録標章検索~
独立行政法人工業所有権情報・研修館(通称「INPIT」)が運営している「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」は、誰でも無料で特許・実用新案登録・意匠登録・商標登録が検索できるウェブサイトです。
このブログでは、複数回にわたって、J-PlatPatを使った商標検索をシリーズでご紹介しています。
【シリーズの各内容】
第1回:全体・番号照会編
第2回:商標の構成や称呼での検索
第3回:図形コードでの検索
第4回:検索する商品役務の範囲指定
第5回:出願人情報での検索
第6回:商標検索の検索オプション
第7回:周知・著名商標検索
第8回:不登録標章検索(本記事)
第9回:図形等分類表
第10回:商品・役務名検索
不登録標章検索の利用場面
以下のリンクをクリックするとJ-PlatPatの不登録標章検索にアクセスできます。
不登録標章検索は、外国等の紋章や、国際機関の名称、ワイン等の原産地名称など、商標登録を受けられないと決められているマークを検索できます。
より具体的には、以下の「経済産業大臣が指定するマーク」、「WTO原産地名称」に該当するマークを検索できます。
経済産業大臣が指定するマーク
- パリ条約の同盟国、世界貿易機関(WTO)の加盟国又は商標法条約の締約国の国の紋章その他の記章(国旗を除く)
(商標法4条1項2号)
例:
- 国際連合その他の国際機関を表示する標章
(商標法4条1項3号)
例:
- 日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関(WTO)の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号
(商標法4条1項5号)
例:
WTO原産地名称
- 日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒(以下「ぶどう酒等」という)の産地のうち、特許庁長官が指定するものを表示する標章
(商標法4条1項17号)
例:北海道(ぶどう酒/北海道)
- 世界貿易機関(WTO)の加盟国のぶどう酒等の産地を表示する標章
(商標法4条1項17号)
例:TEQUILA(日本・メキシコ経済連携協定関連,蒸留酒、WTO登録番号:669)
出願した商標が、こういったマークに該当する場合には商標権を得られないので、その事前チェックに使えます。
不登録標章検索の入力項目
項目[検索キーワード]に入力できる検索項目は、次のとおりです。
-WTO登録番号/告示番号
☞登録番号や告示番号がわかっている場合にはこれで検索できます。
ただ、使用する場面は少ない気がします。
-標章(検索用)
☞文字を完全一致で検索できます。
例えば、「TEQUILA」のように入力します。※全角入力が必須です。
部分一致検索は、「?」を使うことで可能です。
-称呼(単純文字列検索)
☞英語などの商標でも発音をカタカナ表記することで検索可能です。
例えば、「テキーラ」を検索すると、「TEQUILA」がヒットします。
-図形等分類(大臣指定マークのみ)
☞マークの図形要素に付与された図形コードで検索します。
例えば、「3.1.1」を検索すると、ライオンの図形が含まれる紋章などがヒットします。
-製品及び産地名/標章の種類
☞説明欄に記載されている言葉を検索します。
ただし、完全一致検索になるので、言葉の前後に「?」を付けて検索しないとヒットしません。
例えば、「?蒸留酒?」を検索すると、説明欄に「蒸留酒」の文字が含まれるマークがヒットします。
-適用条文
☞商標法4条1項2号、3号、5号、17号の別で検索できます。
-除外キーワード
☞適宜、検索結果から除外することができます。
-日付指定
☞公布(指定)日/告示日の範囲指定ができます。
上記の他、「全件一覧表示(WTO原産地名称)」又は「全件一覧表示(大臣指定マーク)」のボタンをクリックすることで、それぞれの一覧が出てきます。
※「読み方」のアイウエオ順で表示されます。
不登録標章検索は実は必須!?
このように不登録標章を検索できますが、実際には使用する場面があまり想定できないかもしれません。
そこで、必須の使用場面をご紹介します!
不登録標章には、ローマ字3文字や4文字から構成されるマークが数多く含まれています。
そして、ローマ字3文字や4文字から構成される商標は、名称の略称として採用されることが多い商標です。
例えば、金融分野で、「E-commerce Knowledge Portfolio」という名称を考え、「EKP」を略称として使っていこうと思い、先行商標が存在しなかったので商標出願したとします。
しかし、「EKP」は、”欧州中央銀行(ECB)の名称、略称、記章”として不登録標章に掲載されており(告示番号:197-27、4条1項3号該当)、金融関係のサービスに出願しても商標登録は受けられません。
4条1項3号の該当性は、その国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれがない商品又は役務について使用する場合には該当しなくなりますが、金融分野だとアウトです。
そのため、とりわけ、ローマ字3文字や4文字から構成される商標を採用する場合には、不登録標章の検索は必須です。
ローマ字3文字や4文字の商標を採用する際には、ぜひ不登録標章検索も使ってください。
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