国・地域によるブランドイメージの差と商標
私がシンガポールに住んでいた2006年頃、スポーツ用のバッグを探していたところ、ショッピングセンターで↓のロゴマークが付いたバッグを買ったことがあります。
後々気付いたのですが、実はこのロゴマークは、日本ではデイパックなどのブランドとして知られているOUTDOOR PRODUCTS(アウトドアプロダクツ)のものでした。
全然気づきませんでした…。
このブランド、1973年にアメリカで生まれたものですが、今日では、日本とアメリカ(外国)とでは、ブランドに対して抱くイメージが大きく異なるようです。
シンガポールでは、そのことに気づかず買っていました。
日本でのブランドイメージ
日本では、定番のデイパックである452シリーズを中心に、タウンユースを前提とした、カジュアル志向の強いバックパックやファッション用品を販売しています。アメリカ発祥の“日用品ブランド”としての位置づけといえます。
そして、以下のロゴマークが各商品に付けられています。
このマークなら見たことある!という人も多いのではないでしょうか??
私もこのロゴマークがバッグに付いていれば知っているブランドだと認識できたのですが、冒頭のロゴマークでは知っているブランドだと認識できませんでした。
アメリカでのブランドイメージ
一方、発祥の地アメリカでは、アウトドア志向の強い商品ラインナップになっており、登山用や旅行用のバッグ、アウトドア用品が中心です。あくまでもアウトドアギアを取り扱う企業としての位置づけです。
ロゴマークは、以下のロゴマークが付けられています。
ロゴマークに含まれる文字は同じですが、外観が大きく異なるため、一見すると同じブランドだとは気づきません。
この違いはどこから?
このようなブランドイメージの違いは、商標権を保有する企業の意向の違いから生じていると言えます。
日本においてOUTDOOR PRODUCTSを展開する伊藤忠商事は、2012年に本家アメリカのTHE OUTDOOR RECREATION GROUP社から日本を含むアジアでの「OUTDOOR PRODUCTS」の商標権を取得しています。
このことが、日本でのブランド展開の方向性に影響を与えたと言っていいでしょう。
商標権を譲り受けたことによって、商標を何にどのように使用するかコントロールできるようになります。
そのため、日本ではアメリカとは異なるブランドイメージ(=アメリカ発祥の定番デイパックブランド)を確立することができたのです。
今日では、OUTDOOR PRODUCTSは、日本とアメリカとで同じ名前のブランドでも、その内実は全く異なるブランドになったと言えます。
ブランドイメージのコントロール
日本でのOUTDOOR PRODUCTSのブランドイメージ(ブランド認知)は、日本で使用されているロゴマークと結びついて記憶されています。
そのため、アメリカで使用されているロゴマークを何かの機会に見たとしても、即座には日本のOUTDOOR PRODUCTSとはリンクしません。
このように、伊藤忠商事はOUTDOOR PRODUCTSの商標権を取得し、商標権を存分に活用して独自のブランド認知を作り上げてきたと言えます。
もともとは同じブランドであっても、異なるロゴマークを使用し、独自の商品展開・プロモーションをすることで、消費者によるブランド認知を企業が望む方向にコントロールできると言えます。
伊藤忠商事は、今回ご紹介したOUTDOOR PRODUCTSのほかにも、キャンバスシューズで有名な「コンバース」も同様に商標権を取得して海外とは異なる独自の展開をしています。
海外発のブランドの日本展開に際して、商標権を取得して活用し、独自のブランドを確立する戦略が奏功している例と言えます。
(本家アメリカの製品が欲しいという人にとっては、日本では入手できない事態になってはいますが…)
商標権は、自社の商標を保護するだけでなく、積極的に活用することで、独自のブランドイメージ(ブランド認知)を確立でき、本家とは異なる独自の商品展開ができるほどビジネスに重大な影響を及ぼすことができる権利なのです。
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