おにやんま君、正規品はどれ?
昨年の夏、登山をした時に山道でアブに追われて大変でした。
今年は避けたいと思っていたところ、良いアイテムを発見しましたのでご紹介します。
その名も「おにやんま君®」
大阪の株式会社Eikyuが製造販売しています。
アブや蜂などの害虫は、捕食者であるオニヤンマを避ける性質があり、その性質を利用した虫除けグッズです。
薬剤を使用せずに害虫を寄せ付けない効果があるそうです。
実際に先日、那須の朝日岳・茶臼岳への登山で使用したところ、アブがたくさん飛んでいたのに、おにやんま君をリュックに付けていたら付きまとわれることはありませんでした。
効果ありです!
そんなおにやんま君は、意匠権と商標権で知財保護をしっかり図っている商品です。
意匠権
パッケージ(上の写真の右下部分)には「意匠登録1575239」と表示されており、きっちりと意匠権を取得していました。
商標権
パッケージには「商標登録5971736」と表示されています。その内容は次のとおりです。
商 標: おにやんま君 (標準文字)
商標登録5971736
指定商品:第21類「玄関やベランダの上面壁に糸でぶら下げて使用するおにやんまを模造した昆虫類忌避具」
株式会社Eikyuは、この商標登録を含め、指定商品役務の異なる3件の商標「おにやんま君」を登録又は出願しています。
Transparencyコードによるブランド保護
パッケージには意匠登録と商標登録の表示のほか、左上に2次元コードが付けられています。
これは、Transparencyコードと言って、製造される商品1つ1つに固有のコードを付与することで、自社商品の特定を可能にする仕組みです。
Amazonが提供している、偽造品からのブランド保護のための商品のシリアル化サービスです。
購入者は、このコードを専用アプリで読み取ることで、購入した商品が真正品であるかどうかを確認できます。
実際にアプリで読み取ったところ、緑色のチェックマークが表示されて真正品であることが確認できました。
知財保護は万全なれど、正規品はどれ?
「おにやんま君」は、意匠権と商標権を取得し、さらにTransparencyコードを導入して、模倣品対策はバッチリです。
しかし、、、
冒頭の写真の商品は、私が株式会社Eikyuの正規品をAmazonで購入したものですが、実はこの正規品を見つけるのに苦労しました。
というのも、Amazonで「おにやんま君」を検索すると、「おにやんまくん」「オニヤンマ君」「正規品」などと謳った商品が上位に複数ヒットします。
でも、よくよく見ると、これらは株式会社Eikyuの商品の類似品でした。その中には「Amazonおすすめ」の表示まで出ているものもありました。
正規品はどれかというと、冒頭のパッケージ写真が検索結果のサムネイルに表示されているもの(上記Amazon検索結果の右上の商品)でした。
ただ、それが正規品であるかどうかは、届いた実物のパッケージの裏を見て「製造販売:株式会社Eikyu」と書いてあるのを見るまで信じられませんでした。
というのも、Amazonに表示されているパッケージ写真と同じ画像が、(株)Eikyuのウェブサイトに表れておらず、Amazonに表示されているメーカー名もEikyuではなかったので(「メーカー: ビーセレクト」との表示)、このパッケージが正規品かどうか確証が持てなかったのです。
他にも、正規品だと思われるのに「MSY おにやんま君」と書かれた別のものも売っており大混乱です。
権利取得しただけでは模倣対策の目的(=売上向上)を達成できない
この「おにやんま君」の事例からわかることは、意匠権や商標権を取得したり、TransparencyコードのようなAmazonが提供する模倣対策プログラムを導入するだけでは模倣対策の本来の目的(=自社商品の売上向上)は達成できないということです。
類似品を作る会社が、わざわざ正規品の意匠権や商標権を確認して、「権利を取ってるから同種の商品を作るのは避けよう」などと紳士的な対応をするはずがありません。
また、意匠権や商標権の存在を認識していても、巧みに権利に抵触しな商品を作ってくることも考えられます。
そうなると、せっかく世の中に初めて出した画期的な商品でも、多くの類似品に埋もれてしまい、消費者が『類似品ではなく、ホンモノの「おにやんま君」が欲しい』と思っても、そこにたどり着けず、正規品の購入につながりません。
消費者への情報伝達の重要性
ではどうするかというと、ここで必要なのは消費者への情報伝達です。
え?差止請求や損害賠償請求じゃないの?と思われた方もいらっしゃると思いますが、
その前に、正規品の購入ルートと正規品を示す目印(商標・パッケージデザイン)を自社サイト等で正しく消費者に伝えることが必要です。
そうしなければ消費者は正規品にたどり着けません。
正規品が他社の類似品と区別・識別できる状況を作って、そのことを消費者に伝える必要があります。
そうして初めて消費者は正規品を「ホンモノ」であると理解して手に取ることができるのです。
このような状況を作ってから、模倣業者に対して権利行使(差止請求・損害賠償請求)をすれば、確実に売上が向上します。
正規品を確実に買える状況を作らないまま権利行使するのでは、消費者は「ホンモノ」にたどり着けず、権利行使の対象にしなかった類似品に需要が流れるだけです。
まとめ
- 新商品について、意匠権や商標権などの知的財産権を取得することは模倣対策の第一歩となる
- 加えて、Transparencyコードなどの模倣対策プログラムも併用するとなお良い
- ただし、権利取得や模倣対策プログラムの導入の前に、「ホンモノ」がどれかを消費者に伝えることが大事
- 権利行使(模倣業者への差止請求や損害賠償請求)は、他社の類似品と区別・識別できる状況を作ってから実施する