死んだらどうなる? 個人名義の商標権

フリーランスや副業による起業などが増え、個人名義での商標権の取得も当たり前の時代になりました。

では、万一、商標権者が死んだらその商標権はどうなるのでしょうか??

個人名義で商標権を保有している人は、残された人や事業が問題に巻き込まれないよう対策が必要です。

個人名義の商標権の存在

例えば、J-PlatPatの「商標検索」で[出願人/権利者/名義人]に”中村”から始まる商標で、かつ、株式会社などを除く条件で検索を実行すると、1323件ヒットしました。

↑のJ-PlatPatの画面をスクロールすると、中村さんの商標登録を見ることができます。

同じ検索方法で、”鈴木”や”佐藤”などの姓でも多数ヒットします。

このように、個人名義の商標権は多数存在します

このような個人名義の商標権は、個人事業主が取得する場合のほか、中小企業の創業者・社長が個人名義で取得するケースが多いのだと思います。

商標権の所有者が死んだときの取り扱い

では、個人が故人になったとき商標権はどうなるのでしょうか?

それは、実に明快です。

不動産や預金と同じ財産
相続の対象

  

相続の対象になるので、単純なケースだと、法定では配偶者が1/2、子が全員併せて1/2の持ち分を相続することになります。

相続人がいない場合には、不動産やお金などの一般的な財産は国庫に帰属する(=国のものになる)のですが、商標権などの知的財産権の場合は消滅することになっています。

遺産分割協議で忘れられがち

では、通常の財産権と同じように相続されるから問題がないか、というとそうではなくて、商標権などの知的財産権は目に見えるものではないため、相続財産として商標権が存在することを知らずに一連の相続手続きを終えてしまうことがあるのです。

会社経営している人が亡くなった場合は、遺族は「会社の問題は処理しているはず」などと考えてしまう場合もあると思います。

そのため、個人名義の商標権には、故人が名義人として残ったままのものが多く存在していると私は考えています。

放置したらどうなるか?

商標権者である個人が亡くなったら、遺族は、相続による移転登録申請を特許庁に提出する必要があります。

不動産と同じように移転の登記をするわけです。

必要書類・費用は以下のとおりです。

最近では、「法定相続情報一覧図」による手続きも可能になりました。

では、そのような移転登録申請をせずに放置した場合はどうなるのでしょうか?

まず単純に考えられるのは、、、

権利期間は10年なので、放置すれば消滅

ということです。

手続きせずに放置していて、権利満了日がくれば権利消滅です。

実際にはこういうケースも多いんじゃないかと思います。

  

一方で、会社で使っているブランド名が、企業担当者が会社の名義だと思っていたら、実は、今は亡き前社長の個人名義だったということもあります。

この場合の対応としては、商標権を会社名義に変更するのが一番良いですが、前社長が亡くなったときの相続人全員から商標権に関する遺産分割協議書を取り付けて、特許庁に手続きする必要があります。

さらに、前社長の死亡から時間が経っている場合には、相続人がその後亡くなる等、代襲相続としての処理も必要になることもあります。

そうなると、移転登録申請は困難を極めます。

今からできる対策

商標権は、事業を営む人(個人・法人)の目印としての役割があるので、事業を営む人が亡くなった後も、その事業が継続される場合には、権利を維持して事業を安全に継続できる仕組みを作っておくことが大切です。

そのため、以下のような対策が必要です。

 

実際の手続きには税金の処理や遺言などの手続きも必要になるかもしれませんので、税理士や司法書士の先生方への相談も有効だと思います。

相続によるお家騒動に発展しないためにも早めの対策をお勧めします。

さいごに

本記事の内容をまとめたYouTube動画を公開しています。

こちらも併せてご覧ください。

  

また、具体的な移転登録申請のご相談は、以下のリンクのお問い合せフォームからご連絡ください。

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