Madrid e-Filing最近の改善点(出願データ収録前の国際出願)
Madrid e-Filingは、世界知的所有権機関(WIPO)が提供している商標の国際登録のためのオンライン出願サービスです。
日本では、2022年6月1日からMadrid e-Filingを使った国際出願が可能になりました。
Madrid e-Filingのメリット
Madrid e-Filingによる出願の導入前は、紙書類の願書を特許庁に提出しなければなりませんでした。
しかも、願書の受理日は、日本の出願手続きの場合には適用される郵便局への差出日ではなく、特許庁に書類が到達した日になります。
そのため、優先権主張期限が近い出願では、特許庁に直接書類を持参するなどの対応が必要でした。
Madrid e-Filingでは、オンラインで書類提出が可能なため、優先権主張期限当日でも間に合うことになります。
また、基礎出願や基礎登録の番号を入力することで商標やその他の主要な情報がインポートされたり、紙書類の場合に悩まされるWord文書の体裁を整えたりする手間からも解放され、出願書類作成の効率化も見込めます。
Madrid e-Filingの最近の改善点
ところで、これまでMadrid e-Filingを利用できる国際出願は、基礎出願・登録の情報がWIPO Global Brand Database(GBD)に収録されている案件に限られていました。
GBDへの収録は国内商標出願後、数ヶ月を要していたため、国内商標の出願後すぐに国際出願したい場合には、Madrid e-Filingが利用できず、従来どおり紙書類で出願する必要がありました。
それが今年8月から、Madrid e-Filing上で基礎出願・登録の情報を手動入力する手段が提供されたことにより、GBDに未収録の国内商標の出願についても、その出願を基礎としてMadrid e-Filingから国際出願できるようになりました。
これまでは、Madrid e-Filingで出願できるのか、紙書類で出願しなければいけないのか、出願人側でコントロールできないGBDへの収録タイミングに左右されていました。
今回の改善によって、出願人側でどちらの出願方法も選択できるようになるため、実務上有益な改善といえます。
Madrid e-Filing利用上の留意点
メリットの多いMadrid e-Filingですが、利用上の留意点もあります。
欠陥通報への応答
まず、Madrid e-Filingによって出願すると、WIPOから国際登録を受けるまでオンライン上で手続きを完結させなければならず、WIPOからの欠陥通報の対応もMadrid e-Filing上で応答する必要があります。
欠陥通報への応答は日本国特許庁経由で行いますが、従来のように紙書類で提出した場合は、特許庁から「Madrid e-Filingを使って応答してください」と指摘を受けます。
「標準文字の宣言」ができないケース
また、基礎出願・登録が「ラテン文字の標準文字出願」ではない場合、Madrid e-Filing上では「標準文字の宣言」ができません。
文字商標を図形データを使って基礎出願・登録をしたもので、マドプロ出願は「標準文字」にしたい場合には、紙書類での出願が必要です。
さいごに
商標の国際登録制度は、加盟国の増加もあり、今日では非常に利便性の高い制度になりました。
Madrid e-Filingを使うことで、より利便性が高くなり、その利用頻度はますます増えていくでしょう。
一方で、商標の登録要件の判断は各国毎になされます。
そのため、現地代理人も関わる出願後の対応(暫定拒絶通報への応答や、アメリカでの使用宣誓書の提出など)を見据えて出願手続きを進める必要があります。
この点は、いくら利便性が高くなっても変わることはありません。
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