中国 審判の審理の中止

2023年6月13日に中国国家知識産権局(CNIPA)は、最近導入された審判手続きにおける審理の中止に関する規則「评审案件中止情形规范」について、解釈を公表しました。

この規則及びその解釈の公表は、中国の商標審査における実務慣行に影響を与える可能性があります。

中国の商標審査制度

中国の商標審査は、方式審査に通過した後の実体審査では、審査官による審査結果がそのまま査定になります

日本では拒絶理由が通知された後に意見書や補正書を出す機会が与えられますが、そのような機会はありません。

審査結果に不服の場合には、拒絶査定不服審判(再審請求)をするしかありません。

中国 出願から登録までの流れ

拒絶査定不服審判の請求期限は、拒絶査定の受領日から15日以内です。

そのため、拒絶査定を受けたら、迅速に拒絶を克服できそうか検討して、拒絶査定不服審判を請求するかどうか決めなければいけません。

先行商標を理由として拒絶査定を受けたら

年間700万件以上の商標出願がある中国では、先行商標を理由として拒絶査定がされる割合は、日本よりも多いと私は感じています。

結合商標の場合、構成する文字の一部が重複するだけで拒絶されたり、図形商標でも同じ方向性の図形要素が入っていると拒絶されたりと、“日本だと非類似なのに”、と思うような先行商標で拒絶されることが多々あります。

そのため日本と同じ感覚の類否判断を期待して出願すると失敗します。

そして、一度拒絶査定が下ると、その判断を拒絶査定不服審判で覆すのは極めて困難です。

そこで用いられる対応策が、先行商標に対して無効審判や不使用取消審判を請求して権利を消滅させる手段に出ることです。

もちろん、無効審判をする場合にはそれなりの根拠が必要ですし、不使用取消審判をする場合は登録から3年経っていないと請求できません。

ただ、拒絶査定不服審判で非類似の主張が認められにくいので、無効審判や不使用取消審判を使って先行商標を消す手段に頼るしか策がないことも多いのです。

そして、そこで出てくるのが、「拒絶査定不服審判の審理を、無効審判や不使用取消審判の審決が出るまで待ってもらおう」という発想です。

が、そこに落とし穴があります。

従来

拒絶査定不服審判の審理期間は9ヵ月以内、無効審判の審理期間は9ヵ月又は12ヶ月以内、不使用取消審判の審理期間は9ヵ月以内と決められており、拒絶査定不服審判の請求時に「審判の結果を待って下さい」と主張しても、個別事情に基づいて拒絶査定不服審判の審理を中止してくれることはまずありませんでした。

私も何度か拒絶査定不服審判において審理中止の要請をしたことがありましたが、認められたことはありません。

ではどうするかというと、拒絶査定不服審判と並行して無効審判や不使用取消審判を請求するのと同じタイミングで、「バックアップ出願」といって、拒絶査定不服審判に係属している出願と同じ内容の出願をもう1件するのです。

そうすることで、拒絶査定不服審判が認められずに拒絶が確定しても、バックアップ出願について今度は拒絶査定不服審判を請求して・・・という風に常に出願を維持しながら無効審判・不使用取消審判の結果を待つことができます。

バックアップ出願による出願の維持

先行商標に対する無効審判・不使用取消審判を経て登録に至るまで、バックアップ出願を2件、3件することは一般的に行われていました。

管理も大変でコストもかさむので、出願人にとってはできれば避けたい手続きでした。

今後

それが今回の 「评审案件中止情形规范」及びその解釈の公表で、審判の審理を中止する場面が明記されました。

審理を中止する状況として7つ挙げられており、その中に「先行商標が取消の手続中」(3.)であることが入っています。

審理を中止する状況
  1. 引用商標の権利者の名義を変更中で、その変更が完了した場合に抵触関係が解消する場合
  2. 引用商標が権利満了となり、その後更新手続中又は更新手続の猶予期間内の場合
  3. 引用商標が取消手続き又は出願取下げ手続き中の場合
  4. 引用商標が取消・無効又は存続期間の更新がなされず満了になったものの、そこから1年以内の場合。
  5. 引用商標に関する審判について、審決が出され、その確定を待っている場合
  6. 審判に関連する先行する権利の判断が、訴訟で審理又は行政機関で処理されている他の案件の結果によって決せられる場合(異議申立や無効審判の審理中止に適用)
  7. 引用商標のステータスが、訴訟で審理又は行政機関で処理されている他の案件の結果によって決せられる場合であって、かつ、出願人が審理の中止を明示的に要請した場合(拒絶査定不服審判の審理中止に適用)

上記の他にも審判官の裁量により審理を中止できる場合が3つ定めれています(ここでは割愛します)。

 

先行商標を理由に拒絶された場合には、当該先行商標に対して、無効審判や不使用取消審判をするのが常套手段となっていたので、今回導入された規則及びその解釈の公表による審理中止の運用変更は、先行商標に悩まされる出願人にとっては有利な変更になります。

また、今回の審理の中止は、拒絶査定不服審判だけでなく、異議申立や無効審判の審理にも適用されます。

 

運用変更がどう実施されていくのか、まだ実例は多くありませんが、期待したいところです。

 

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