商標権によるブランド要素の多面的保護 ~キッコーマンのしょうゆ~

商標権とは

商標とは、「自社の商品と、他社の商品とを区別・識別するための目印」です。

典型的には、特定の会社のみが使う商品名が該当します。

例えば、ペットボトル入りのお茶だと、

「お~いお茶」、「伊右衛門」、「爽健美茶」のような商品名です。

このような「自社の商品と、他社の商品とを区別・識別するための目印」を権利として保護するのが商標権です。

商標権の対象は、商品名の他、図形や記号、立体形状、色、音、動きなど、「自社の商品と、他社の商品とを区別・識別するための目印」として機能するものが該当します。

商標権の対象

「あのブランドだ!」と認識できる要素

ところで、一つの商品や商品パッケージを見て、「あのブランドだ!」と認識できる要素(ブランド要素)は、どのくらいあるでしょうか?

ペットボトル入りのお茶の例だと、商品名の他、パッケージのデザイン・イラスト・色、ボトルの形状、も該当するかもしれません。

ただ、 商品や商品パッケージに記載されている特定の文字や図形などをブランド要素だと認識するかどうかは、人によって差があると思います

さて、そんなブランド要素を多く含む商品として、キッコーマンの「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」があります。

いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ

皆さんは、このパッケージのどの部分から、「特定のブランド(キッコーマン)だ」とか、「いつも買ってる醤油だ」などと感じるでしょうか?

今回は、このキッコーマンの「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」を例に、何がブランド要素になるのか、どう保護しているのか、をご紹介します。

キッコーマンによるブランド要素の保護の例

キッコーマンは、「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」のパッケージに使用されている個々のブランド要素を商標権で保護しています。

文字や記号のブランド要素

パッケージ前面に記載された文字や記号については、そのほとんどを権利化しています

商標権を取得していないのは、「酸化を防ぐ/やわらか/密封ボトル/開栓後常温保存」や「200ml」といった内容を単に表示する文字のみです。

ここで注目すべきは、「いつでも新鮮」の文字については「Ⓡ」が右端に記載されている点です。

「Ⓡ」は登録商標を指しており、「「いつでも新鮮」は登録商標ですよ」とアピールしているわけです。

これは、「いつでも新鮮」の文字は、宣伝文句として他社も使いそうだと思われそうなところを、キッコーマンが頑張って商標権を取得できたので、他社への牽制として、「Ⓡ」と使ってキッコーマンの登録商標であることをアピールしているのでしょう。

ボトルの模様

キッコーマンはしょうゆのボトルの上下に描かれたの縞模様について商標権を取得しています。

キッコーマンはこの縞模様には力をいれているようで、CMやウェブサイトに出てくるキッコさん、キッココちゃんは、この縞模様のセーターを着ています。

この商標は、平面的な図として商標権を取得しており、ボトルパッケージの立体形状への使用についても守られるのか、という点については、議論はありそうですが、この縞模様のしょうゆと言えば「キッコーマン」という認識は、消費者の中にあると思います

ボトル形状

ボトルの形状に絡めての商標権もしっかり取っています。

この中で、登録第6169390号や登録第6568026号は、本来は商標権の取得が難しいところですが、ボトル形状や縞模様などの長年の使用実績が認められて登録になっています。

とりわけ一番下の立体商標(登録第6568026号)は、文字要素を一切含まず、形状と色分け(縞模様)だけで、キッコーマンの「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」を保護しています。

他社が模倣するかどうかは別として、このボトルを見ればキッコーマンのしょうゆということを理解させているのは、企業努力に他なりません。

まとめ

ということで、キッコーマンは「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」に関して、実に11個の商標権を取得して、そのブランド要素を保護しています。

一つの商品に、これだけ多くの商標権を取得することは珍しいと思います。

しょうゆが伝統的な商品であることから、長期的なブランド価値の維持・向上という視点があるのではないでしょうか。

また、小型ボトルに入ったしょうゆは、消費者向けの商品であり、コンビニやスーパーでの”棚の獲得”という点からすると、売り場での目に付く部分をブランド要素として積極的に保護するメリットは大きいと思います。

  

本記事で取り上げたキッコーマンの「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」について話をしたYoutube動画を公開しています。

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