カナダの商標法が改正されます

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カナダの商標法が改正され、2019年6月17日に施行されます。

ひと言でいうと、日本の商標制度に近くなる改正内容と言えます。

今回は、その概要をご紹介します。

主な改正点

主な改正点は以下のとおりです。

  • 区分制度の導入
  • 使用要件の撤廃
  • 商標の定義の拡大
  • 存続期間の変更
  • 国際出願制度(マドリッドプロトコル)への加盟

区分制度の導入

改正前

これまで、カナダの商標法は、指定商品・指定サービスを区分毎に指定する必要はありませんでした。

また、区分毎に指定する必要がないことに関連して、カナダ特許庁に支払う印紙代は一律でした(出願時:250カナダドル、登録時:200カナダドル)。

改正後

改正後は、日本をはじめ多くの国が採用している国際分類に基づいた区分制度に移行します。

そのため、日本の区分の概念と同じ考えで出願することが可能になります。

しかしながら、区分制度への移行に伴い、カナダ特許庁に支払う印紙代の計算方法が区分毎に加算される体系になります。

印紙代の具体的な計算式は以下のとおりです。

  330カナダドル/1区分目+(100カナダドル×2区分目以降の区分数)

なお、印紙代は上記の費用を出願時に支払うのみとなり、登録時の印紙代はなくなります。

3区分以上の出願になると、改正前の費用の方が安くなります(カナダ代理人費用は別途かかります)。

また、改正前に登録された商標は、権利の更新時に指定商品・サービスを国際分類に区分することが必要になります。

使用要件の撤廃

改正前

カナダでは、商標の登録を受けるには、「カナダにおける使用」、「外国での使用及び登録」又は「使用宣誓書の提出(使用意思に基づく出願の場合)」が必要でした。

つまり、カナダでの商標の登録には、商標の”使用”が必須でした。

改正後

しかし、改正後は、”使用”は登録のための要件ではなくなります。

商標の”使用”を気にせずに指定商品・指定サービスを記載できる日本の制度に近くなります。

でも、使用が必須でなくなると、悪意を持った商標出願が増える可能性があります

つまり、商標を使用していない第三者が、先取り的に商標権を取得してしまうリスクが高まるのです。

そのため、カナダ市場に商品が流通する可能性のある企業や、カナダで事業を検討している企業においては、今一度、自社の商標が適切な指定商品・指定サービスで登録されているか確認したほうがよいでしょう。

商標の定義の拡大

改正前

これまで、カナダでは、文字や図形のほか立体形状や音の商標が商標法の保護対象でした。

改正後

改正後は、「色彩のみからなる商標」、「動き商標」、「におい商標」、「味の商標」、「テクスチャの商標」、「位置の商標」、「ホログラム商標」が保護対象に加えられます。

これらの中で「におい商標」や「味の商標」は、どうやって商標を出願して審査するのでしょうか・・・。

存続期間の変更

改正前

改正前は15年でした。

改正後

改正後は10年になります。

改正前に登録された商標はそのまま15年間有効ですが、次回の更新時に10年の存続期間になります。

しばらくの間、15年の存続期間で計算する登録と、10年の存続期間で計算する登録が混在します。

商標管理上は、注意しないといけません。

国際出願制度(マドリッドプロトコル)への加盟

長らく検討されてきた国際出願制度への加盟がようやく実現します。

これにより、北米地域(アメリカ、カナダ、メキシコ)すべてについて、国際出願制度(マドリッドプロトコル)による商標出願が可能になります。

これは実務上大きいと思います。

さいごに

カナダ商標法上の大きな法改正です。

カナダの代理人やカナダの特許庁審査官も改正法の施行により実務が大きく変わります。

特に、指定商品・指定サービスの区分の選択は、カナダの代理人や審査官は不慣れな可能性があります。

法改正後の出願で区分の相違について指摘された場合には、カナダ代理人とも密に連絡を取って、自社の商品・サービスが適切に保護できるように対応することが重要だと思います。

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