商標審査は早い方が良いのか?
商標権は、特許庁に書類を提出しただけでは発生しません。
特許庁の審査官による審査を通過してはじめて権利が発生します。
そのため、ある程度時間が掛かります。
では、どのくらいの時間が掛かるのでしょうか?
現在の審査期間
2021年11月の時点では、出願から8ヵ月~12か月ほどでようやく審査が開始されます。
でも、実は、2015年くらいまでは、半年ほどで審査結果が届いていたのです。
それが、出願件数の増加によって、審査待ちの案件が増えて、どんどん審査が遅くなっていったのです。
下のグラフは、出願されてから最初の審査結果が届くまでの期間(FA期間)の推移を表すものです。
2015年以降徐々に期間が長くなり、10カ月程度で高止まりしている状況です。
特許庁もこの状況には憂慮しており、審査期間短縮のために、いろいろな施策を展開しています。
例えば、
出願支援ガイド「商標出願ってどうやるの?」を発行して、審査のしやすい出願を増やそうと努力しています。
また、審査を急ぐ人には、
- ファストトラック審査
- 早期審査
の二つのオプションを設けて、早く権利を取得する道も開いています。
審査は早ければよいのか
では、審査は早ければ早いほど良いのでしょうか??
審査が早いメリットとしては以下が挙げられます。
• 商標を使えるか使えないか早く知ることができる
⇒ 事業展開と合わせられる
• マドプロの基礎として、マドプロ出願後にセントラルアタックを避けられる
一方で、メリットだけでなく、審査が早いことによるデメリットも多少はあります。
• 外国からの出願で自分の権利が無効となるリスクがある
この”無効リスク”は、外国から日本に出願される商標について”優先権”という外国出願の出願日を判断基準日として取り扱う制度に起因します。
下の図で説明すると、出願Aの方が日本で先に出願されたとしても、出願Bが米国での出願の優先権を伴っているので、判断時期としては出願Bの方が早いことになります。
審査が早く済むと、こういった外国からの出願による無効リスクの可能性があります(もちろん、頻繁にある事例ではありません)。
このほか、国際出願(マドプロ)で日本に入ってくる商標でも同様のリスクはあります。
この具体例については、最下部の動画で紹介していますのでご覧ください。
審査期間のコントロール
一般には、商標の審査は早く済む方が良いでしょう。
ただ、無効リスクが存在する可能性もあるので、商標の内容や商標の使用タイミングによっては急いで権利を取得しなくてもよい場合もあります。
そのような場合には、ファストトラック審査に乗らない出願内容で出願することを検討できます。
特に指定商品の範囲を明確にしてきっちり権利取得したい場合には有効だと思います。
また、ファストトラック審査や早期審査を活用した場合には、無効リスクの把握のために、外国からの他社出願の有無を出願後にチェックしたほうが安心です。
動画のご紹介
本記事について話をしたYoutube動画を公開しています。
特に、上記の外国からの出願で自分の権利が無効となった具体的事例をご紹介していますので、ぜひご覧ください。