商標弁理士としての知財業界での夢と希望

7月1日は「弁理士の日」です!

なぜ、7月1日が弁理士の日であるかというと、明治32(1899)年7月1日、弁理士法の前身である「特許代理業者登録規則」が施行されたことから、日本弁理士会が、その施行日である7月1日を「弁理士の日」に制定したのです。

この弁理士の日に合わせ「独学の弁理士講座」を運営している弁理士の内田浩輔先生から「弁理士の日記念ブログ企画2021」への参加のお誘いがありました。

 

テーマは「知財業界での夢と希望」です。

そこで、今回は、私個人の商標弁理士としての知財業界での夢と希望をテーマにお伝えします。

弁理士の文系・理系の比

統計上、弁理士資格を取得する人の約8割が理工系出身者と言われています。

実際、令和2年度の試験の最終合格者統計でも理工系が79.4%を占めています。

企業活動の中で生まれる発明は、技術的思想の創作です。

それを特許として権利化するための文章にするには、当然ながら技術を理解できなければ話になりません。

そのため、理工系のバックグラウンドを持つ弁理士に多いのも当然です。

理工系を卒業しないとダメか?

では、理工系の科目を履修したことのない人は弁理士として、又は、知財業界で活躍できないのでしょうか。

もちろん、そんなことはありません。

実際、理工系出身者以外にも活躍している人はいます。

では、どういうところで活躍しているのでしょうか。

①理工系学部に入学し、特許を担当

弁理士の人数比や出願件数からもわかるとおり、弁理士の仕事の多くは発明(特許)に関するものです。

そのため、まず思いつくのは、働きながら理工系学部の大学に入学し、技術的な素養を獲得することです。

実際にそのような学歴を持つ弁理士も多くいます。

私も、弁理士資格を取ったときはそうしようと思っていました。

②外内担当

外内業務(外国企業が日本で特許出願する際の代理業務)では、英語が堪能な人材として理工系出身者以外の人も活躍されているようです。

主に英文明細書から日本語の明細書を作るということです。

個人的には、英語が堪能というだけでは不安な気もしますが、技術知識を身に着けながら仕事を進められるという点で良いキャリア形成と思います。

③商標専門に

最後に、今回私がメイントピックに挙げた、商標の専門弁理士として仕事をしていくことです。

私が歩んでいるキャリアはまさにこれです。

私が特許事務所に就職したとき、当時の所長に、「大学に入りなおして技術的な知識を勉強しながら特許を担当するのもいいけど、商標の仕事もやりがいあって忙しいから、そういうキャリアもありだよ」と言われました。

これは事務所の規模や業務内容にもよりますが、商標関連の業務を独立した事業の一つとしてとらえている事務所では、商標専門の弁理士として活躍する場があります。

また、意匠部門を持っている事務所や商標と意匠とを兼任している事務所では意匠の専門という道もあり得ます。

専門分野をもつことの重要性

弁理士の仕事の中心は、やはり、特許庁での権利化業務です。

ここで、特許を担当する弁理士でも、あらゆる技術に対応できるわけではなく、必ず専門分野・得意分野があります。

企業が特許出願の代理を弁理士に依頼するときでも、その技術分野を得意とする弁理士に依頼することがありますし、特許事務所が担当を決める際は、所属する弁理士の得意分野や専門分野を当然考慮します。

また、外国語が得意・外国法に関する知識を有している、という点も担当できる業務に差が出るポイントです。

商標や意匠に関しても、専門的にやれば片手間でできる仕事ではありません。

弁理士の仕事が多岐にわたることを考えると、専門分野が、特許ではなく「商標」だったということもありなのです。

商標弁理士への風当たり

もちろん、弁理士の業務は特許に関することが多いのは事実です。

また、依頼者側(クライアント企業)も、特許の権利化は弁理士に依頼するけど、商標は自社でできるから弁理士には依頼しない、という企業も多くあります。

さらに、特許庁も、”誰でも” 商標出願できるというような案内を積極的に出しています。

そのためか、商標弁理士は「将来的に仕事が減る(なくなる)」と言われて久しいです。

数年前のAIブームの時も同じような論調で語られることが多くありました(参考「商標分野における AI の今後について」↓)。

 

ひどい話だと、実際私は、過去に、特許を担当する先輩弁理士から、「不使用取消審判の請求書は1枚ぺらなのに、なんで手数料がこんなに高いの? そんなの5,000円程度でやってあげなよ。」とか、

商標を自社対応すると言っている中小企業の人から「商標専門の弁理士なんですか?簡単な手続きなのに依頼してくるお客さんいるんですか(笑)?」って言われたりしました。

 

なぜこのような認識が生まれるのか?

それは、おそらくですが、目に見えるアウトプットのボリュームと実際の検討内容が比例しないからではないでしょうか。

特許の場合、難しい文章が何ページにもわたって記載されていて、図面もいろいろ付いている。

特許請求の範囲の言葉は難解で、とてもじゃないけど自分じゃ書けない。

一方、商標の場合は、商標の画像データを願書に貼って、指定商品役務の欄に特許庁のウェブサイトで検索した商品を書いただけ(に見える)

不使用取消審判にしても、「使ってないから取り消しを求める」って書いてあるだけ(に見える)

ということなんだと思います。

深く考えずにやれば、それはそうなるでしょう。

でも、商標弁理士は、指定商品をどうするか、出願する商標の態様をどのようにするか、という点について、過去の判断例や商標の使い方、将来性なども加味して検討し、結果として1枚ぺらの願書を作っています。

不使用取消審判にしても、どの範囲で取り消せばよいか、実際に取り消すことができるか、他に取り消すべき商標が存在しないか、などをいろいろ検討しての1枚ぺらの審判請求書になるのです。

そのような検討事項は、成果物として見える願書や審判請求書には表れないので、ぱっと見わからないでしょう。

ということで、商標弁理士は業界内では肩身の狭い思いをしてきた人も多いと思います。

商標弁理士の活躍の場

とまぁ、商標弁理士は難しい立場にあるかもしれませんが、一方で昨今では、商標に関するニュースが報じられる機会も多くなっており、商標の専門知識が必要な場面も増えてきています

また、出願手続きを自社で進める体制を整えたとしても、難しい案件については弁理士に相談するという企業や、調査だけは弁理士に依頼するという企業もあります。

私自身も、出願の代理はしないけど、登録可能性調査を依頼いただいたり、会社としてどのように進めるべきかについての社外アドバイザーとしての対応を依頼いただくケースが増えています。

つまり、手続き書面作成のハードルは低くなってきているのは事実だとしても、商標実務の奥深さを知っている企業(ちゃんと検討しないとブランドを適切に守れないと知っている企業)にとっては、商標実務に精通した弁理士のアドバイスが必要な事案も多くあるのです。

とくに、実際に動いているビジネスの進展に合わせて外部専門家として弁理士が助言することは、客観的な視点で社内の方針決定や合意形成に貢献できるので、単に出願を代理する業務よりもやりがいを感じますし、企業担当者や代表者の方から感謝の言葉をいただく機会も多いと感じます。

今後は、もっともっと、外部専門家として企業に求められる活動をしていくのが商標弁理士としての知財業界での希望です。

このような活動の機会が増えれば、弁理士全体で商標出願の代理件数が減っていく可能性はあるとしても、商標弁理士のやりがいある活躍の場は存在し続けると思います。

そして、このようなやりがいある活躍の場を多く作っていき、「ちゃんと商標について考えるなら商標を専門にする弁理士に依頼するとお得だよ」、という認識を世の中に広め、当たり前のことのように認識してもらうのが、商標弁理士としての知財業界での夢です。

そうなれば、商標弁理士は、知財業界で夢と希望のある職種ということができるようになると思います。

一緒にそのような認識を広められる活動ができる仲間を増やしていきたいと思っています!

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