2020年1月以降に商標出願する場合の留意点
2019年も残すところ1ヶ月になりました。
商標出願の実務において、毎年1月1日は、制度変更が適用されるタイミングでもあります。
その制度変更の内容とは、指定商品・指定サービスの記載に関する運用の変更です。
年が変わって商標出願する場合には、その変更点を把握しておかないと、後で補正などの手間が増えることに繋がります。
今回は、2020年1月1日以降に適用される指定商品・指定サービスの記載に関する運用変更で特に重要な1点をお伝えします。
「類似商品・役務審査基準」の改訂
商標出願をする際には、商標の使用対象となる商品やサービスを指定しなければなりません。
そして、その商品やサービスは、やみくもに記載すればよいわけではありません。
この世の中の商品やサービスは、必ず、国際的に定められた45個の区分のどこかに属することになっていて、商標出願で指定する商品・サービスは、その区分を指定して記載する必要があります。
また、特許庁では、適切な審査のために商標出願で指定される商品やサービスの類似範囲を定めています。
これらが「類似商品・役務審査基準」に載っているのです。
そのため、商標出願に際しては、「類似商品・役務審査基準」を参考に、指定商品・指定サービスを選択することが行われています。
その「類似商品・役務審査基準」は、最近では毎年改訂されています。
そして、この審査基準に則って指定商品・指定サービスが指定されていない場合には、拒絶理由が通知されてしまいます。
というわけで、商標の実務上は重要な基準なのです。
今回の変更点の目玉
今回の変更点の目玉は何といっても「菓子」(第30類)です。
これまで「菓子」は、チョコレートでもポテトチップスでも甘栗でもすべて第30類という区分で保護されていました。
それが今回の変更で以下のように分かれます。
なんのこっちゃ??
簡単に言うと、菓子の主原料が「果物・野菜・豆類・ナッツ」であるかどうかで、区分(類)が異なってくるということです。
例えば、前述のチョコレート・ポテトチップス・甘栗の例だと以下のようになります。
「ポテトチップス」の主原料のジャガイモは野菜で、「甘栗」の主原料の栗はナッツです。
そのため、2020年1月1日以降は第29類に属する商品として扱われます。
ただ、羊羹(小豆が原料)のように、加工の度合いが極めて高く、原料から根本的な性質が変わってしまったものについては、第30類に該当します。
また、「チョコレートで覆われたナッツ菓⼦」についても、チョコレートコーティングにより”甘いお菓子”の性質に変わっていることから、第30類に分類されます。
どんな影響があるか
これまで第30類に「菓子」と書けばよかったのが、その主原料や加工の度合いによって、第29類なのか第30類なのか、見分けなければなりません。
例えば、コンソメ味のポテトチップスは第29類に該当することになりますが、一方でチョコレートでコーティングされたポテトチップスは第30類に該当すると判断される可能性があります。
その場合、どのような影響があるでしょうか。
費用への影響
まず、その直接的な影響は費用に及びます。
特許庁の印紙代は、区分の数に基づいて計算されます。
そのため、これまで「ポテトチップス」を保護するには、チョコレートで覆われているかどうかにかかわらず、第30類の一つの区分で足りたのが、今後は二つの区分を指定しないといけない可能性があります。
そうすると、区分が増えた分の印紙代(8,600円)がこれまでよりも掛かるわけです。
不使用の可能性
また、商品「チョコレートで覆われたポテトチップス菓子」について商標権を取得する際に、本来は第30類で権利を取得すべきところを、第29類「菓子(果物、野菜、豆類又はナッツを主原料とするものに限る。)」を指定商品として商標権を取得した場合、商標を指定商品に使っていない状態になってしまう可能性があります。
これの何が問題かというと、
商標権は、3年以上、登録した商標をその指定した商品やサービスに使用していない場合、不使用取消審判で取り消されてしまう可能性があります。
誰でも、商標が使用されていないことを理由に、不使用取消審判を請求することができるのです。
さいごに
現時点で出願できる商標について、原料に関わらず「菓子」について権利を取得したい場合には、2019年中に出願を済ませるのも手です。
一方、2020年1月1日以降は、お菓子について商標出願する場合、主原料や加工の度合いをちゃんと把握して、指定商品を検討し、区分を選択して出願する必要があります。
不明な時は、特許庁や弁理士に聞くのもありです。
その他の変更点は特許庁のウェブサイトで公開されています。
2020年以降の出願の際には、自分の商標出願に関係するかどうか、ぜひご確認ください。