外国での商標権取得は助成金を活用しよう
商標権をはじめとする知的財産権は、権利を取得した国でしか有効ではありません。
つまり、日本の特許庁に出願して取得した商標権は、日本国内でしか効力がありません。
海外進出する際には、進出先の国での商標権の取得が必要になります。
でも、日本の個人や法人は外国の特許庁に直接手続きできないため、海外での商標権の取得は、 現地の弁護士・弁理士に依頼する必要があります。
そのため、一般的に日本での商標権取得よりも費用が高くなります。
また、国数が多くなるとそれだけ費用も掛かってきます。
そこで活用したいのが、助成金制度です。
ここでは、東京都の例をご紹介しますが、特許庁が各都道府県の機関を通じて行っている助成金制度なので、他の道府県でも同様に助成金を受けることができます。
概要
東京都知的財産総合センターでは、「外国商標出願費用助成事業」として、外国商標出願に掛かる費用の一部を助成しています。
最近ではその知名度も高くなってきています。
助成金に使える予算は限られているので、申請したすべての企業が助成金を受けられるとは限りません。
対象となる対象者
助成金を受けることができる対象者は以下のとおりです。
- 中小企業(個人事業者を含む)
- 中小企業団体
- 一般社団法人・一般財団法人
上記に該当する法人・個人であっても、納税状況等によっては対象者から外れることもあります。
助成の内容
助成対象の商標出願に掛かった経費の1/2が助成されます(限度額60万円)。
つまり、最大120万円の経費で60万円が補助されるのです。
商標出願の国数が増えると120万円以上掛かることもザラです。
これが半額補助されるのは大きいです。
対象となる経費は、以下のとおりです。
- 外国特許庁への印紙代
- 国内外の代理人費用
- 翻訳料
- 先行商標調査費用
- 通信費、運送料、振込手数料
消費税や、出願後の費用(中間手続や登録料、権利維持費用)は対象外です。
そのため、完全な半額補助ではありませんのでご注意を。
募集時期
東京都知的財産総合センターでの募集はすでに始まっています。
- 第1回:2019年4月1日~2019年6月7日
- 第2回:2019年6月10日~2019年10月18日
なお、助成の申請書は、事前に提出日時の予約をして、持参して提出しなければなりません。
第1回の締め切りは、6月7日です。
まだまだ時間的な余裕があると思われるかもしれませんが、見積もりの取得や東京都知的財産総合センターへの事前相談や申請書の持参など、けっこう時間がかかります。
そのため、実はあまり時間がありません。
助成金を受けたい人は急ぎましょう!
留意点
事前相談に行こう!
助成金は、書類だけ出せば自動的にもらえるわけではありません。
東京都知的財産総合センターの担当者に、自社の事業内容や海外展開の事業計画をきちっと説明をして、商標権の必要性を理解してもらわないといけません。
逆に言うと、事業計画がちゃんと立てられていて、かつ、商標権の必要性が明らかであれば、助成金の採択に近づきます。
そして、東京都知的財産総合センターでは、申請書類の提出の前に相談を受けるように案内しています。
事前相談でアドバイスをもらってから、申請書類を正式に提出するわけです。
都道府県によって事前相談が必須かどうかは異なる可能性がありますが、いずれにしても助成金の採択を目指すなら事前相談を受けたほうよいでしょう。
登録可能性をプロに調査してもらおう!
申請書には、登録可能性についての調査報告書を添付しなければいけません。
助成金を交付する側の立場に立つと、商標権の登録が認められる可能性が高い案件を採択したいというのは当然です。
助成金の採択判断における登録可能性の審査は、申請者が提出する先行商標調査報告書に基づいて行われます。
先行商標調査が不十分な場合は助成金審査で不利になります。
客観的に登録可能性が高い案件であることがわかるように、商標登録のプロである弁理士の見解が付いた調査報告書の方が好ましいのは言うまでもありません。
もちろん、この調査費用は、助成金が採択された場合に、経費として半額の助成が認められます。
そのため、助成金の申請の際には、調査だけでも弁理士に依頼したほうが良いと思います。
助成金はキャッシュバック方式
助成金は、採択が決まっても、自動的にお金がもらえるわけではありません。
実際に支出した額に対して1/2の助成金が交付されるため、助成金の交付は、東京都知的財産総合センターの担当者が、出願の事実や、経費が実際に弁理士や外国代理人に支払われたことを確認してからになります。
そのため、助成金がもらえるとはいえ、外国への商標出願に掛かる資金の準備が必要です。
さいごに
ぜひ、外国での商標権の取得を目指す方は早めに、助成金の申請を受け付ける機関(東京では東京都知的財産総合センター)に相談に行ってみてください。
以下のリンクで具体的な情報を入手することができます。
- 特許庁「外国出願に要する費用の半額を補助します」
- 東京都知的財産総合センター「外国商標出願費用助成事業(2019年度)」
対象となる道府県によってはまだ募集が始まっていません。
それでも相談だけでも事前に受け付けてくれると思います。
ぜひ、日本のブランドを外国でも保護して、海外事業を安全に進めましょう!