色彩商標の登録状況

2月9日の神戸新聞NEXTにて、「色彩の商標登録狭き門 申請500件中わずか7件」との記事が掲載されていました。
色彩は、通常は、商品やサービスの魅力などを伝える手段として使われ、識別標識としては機能しません。
そのため、商標として登録するには、その色彩が使用された結果、識別標識として認識されていることを証明しなければなりません。
それゆえ、登録までのハードルが高いのです。
では、この登録になった7件とは、どんな色彩なのでしょうか。
目次
トンボ鉛筆(登録第5930334号)
記念すべき色彩商標の登録第一号は、トンボ鉛筆の消しゴム「MONO」の色彩です。

指定商品は、当然ながら「消しゴム」です。
色彩商標の登録についてのプレスリリースには、以下のように記載されており、50年近く同じ色彩を使っていることがわかります。
https://www.tombow.com/press/170301-2/
MONOの青、白、黒の3色柄は、昭和44(1969)年に発売した「MONO消しゴム」の本体を巻いている紙製ケース(スリーブと呼ぶ)に採用して48年間、変わっていません。
セブン-イレブン・ジャパン(登録第5933289号)
トンボ鉛筆の出願と同時に登録査定を受けて、登録自体は2番目になった色彩商標がセブンイレブンの看板の色です。

指定役務は「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」などの小売サービスです。
日本全国(沖縄を除く。)に2万店舗以上がありますので、その知名度はやはり全国区です。店舗看板も統一されており、納得の登録と思います。
三井住友フィナンシャルグループ(登録第6021307号、登録第6021308号)
続いて、3番目は三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)の通帳や店舗看板の色彩2件です。

色彩の割合が微妙に異なる
指定役務は、「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引」などの金融サービスが中心です。
左の登録については、加えて「経営の診断又は経営に関する助言」、「セミナーの企画・運営又は開催」、「遺言の執行,遺言の整理,遺言書の保管,公的年金に関する助言及び指導,公的年金に関する情報の提供」などの付随的なサービスまで対象にされています。
この判断は、ちょっと甘くないかと思いました。
事業としてやっているのでしょうけれど、「セミナーの企画・運営又は開催」の分野でこの色彩を見てSMBCを思いつくのでしょうか?
三菱鉛筆(登録第6078470号、登録第6078471号)
次に登録になったのが三菱鉛筆の鉛筆「ユニ」と「ハイユニ」の色彩です。

指定商品は、もちろん「鉛筆」です。
筆記用具を使用する頻度が減る時代に、今後もこの知名度を保っていくことが、色彩商標を活用したブランディングのカギを握ります。
有名ではなくなっても商標権が無効になったりはしませんが、商品自体が売れなくなってしまえば、商標権はビジネスの役に立ちません。
色彩を活用した製品展開(タブレット用ペンへの展開等)を通じて、色彩によるブランディングを進めてもらいたいです。
ファミリーマート(登録第6085064号)
そして、今日時点での最新の色彩商標がファミリーマートの看板の色彩商標です。

指定役務は、セブンイレブンと同じように「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」などの小売サービスが中心ですが、ほかにも「ガス料金又は電気料金の徴収の代行」や「宅配便の媒介又は取次ぎ」、「飲食物の提供」などが含まれています。
確かに店舗内で行われているサービスといえばそうかもしれません。ただ、こちらもちょっと審査が甘くないか?と思います。
さいごに
色は、デザイン上の問題もあってコロコロと変えてしまいがちですが、そこをグッと我慢して、使い続けることで商標(ブランドを示す目印)として認識されていきます。
”気づいたら何年も変えず使って、商標として認識されていた”という可能性もありますが、やはり、効率的なブランディングの観点からは、色彩に限らず、ロゴなども”ある程度は変えずに続ける”ことも重要だと思います。
ところで、同じ文房具の分野でトンボ鉛筆の「MONO」と三菱鉛筆の「ユニ」は、”単一”を表す類義語的な近さがあって面白いですね。