自分の名前を商標登録!?
先週、株式会社ZOZOが商標「前澤友作」を出願していることがわかり、にわかに話題になりました。
そして、それに乗じて、2019年1月23日のテレビ朝日「グッド!モーニング」に顔写真付きで音声出演しちゃいました!出演の状況を引用します。
前澤社長や株式会社ZOZOの狙いはわかりませんが、法律上、人の氏(姓)や名、氏名は商標登録できるのでしょうか。今日はこの点について触れてみたいと思います。
氏(姓)の商標登録
まず、氏(姓)のみの商標登録についてです。
結論からいうと、ありふれた氏のみから構成される商標は、基本的に商標登録できません。
”ありふれた氏”とは、例えば、鈴木や佐藤、本田、川崎など、よくある姓のことです。もちろん中村も該当します。
なぜかというと、氏は、その人が作った商品や、提供するサービスの識別標識として使われることが多く、ありふれた氏は、他人の商品やサービスとの識別標識として機能しないためです。
例えば、日本には、たくさんの佐藤さんが存在し、その中には、病院や歯科医を開業している佐藤さんもいるわけです。
そのため、日本にはたくさんの「佐藤クリニック」や「佐藤歯科」が存在し、”佐藤”は相対的に識別標識にはならないとされているのです。
ちなみに、ありふれた氏に「クリニック」や「歯科」などの業種を付けても、ありふれた名称に該当するので同様に登録できません。
そのため、氏を商標登録しようとする場合には、”ありふれた氏のみ”に該当しないように、識別標識として機能する他の要素をくっつけたり、有名であることを主張したりして、商標登録するのです。
一方で、ありふれていない氏(姓)であれば、このような制限なく商標登録が可能です。
例えば、ありふれていない氏として、「東雲(しののめ)」は商標登録されています(商標登録第5448060号など)。
名の商標登録
では、名(いわゆる”下の名前”)はどうでしょうか。
結論は、ありふれた名でも商標登録が可能です。
他の人が同じ商品やサービスの分野で先に商標登録を取得していない限り、「太郎」でも「花子」でも登録できます。
氏名の商標登録
それでは氏と名の両方をくっつけた氏名(姓名)はどうでしょうか。
結論は、同姓同名の他人がいる場合には、その他人の承諾を得ない限り、登録できません。
つまり、氏名は、同姓同名の他人が存在するだけで登録できないのです。
その背景には、氏名から生じる人格的な利益を保護するという理由があります。
冒頭の「前澤友作」を例にすると、株式会社ZOZOは、前澤友作氏から承諾を得なければ、「前澤友作」を商標登録できません。
もちろん、株式会社ZOZOは、同社の社長である前澤友作氏から承諾をもらえるでしょう。
ところが、同姓同名の人物が複数存在する場合には、たとえそれが自分の氏名であっても、同姓同名の他人の承諾をもらわないと、商標登録を受けられません。
そうすると、株式会社ZOZOの社長の前澤友作氏以外に、前澤友作さんが存在する場合には、その前澤友作さんからも承諾をもらわないと商標登録を受けることができません。
インターネットで「前澤友作」を検索すると株式会社ZOZOの前澤友作氏と思われる情報ばかりがでてきますが、特許庁の審査では、電話帳なども使うので、このあたりの調査でどう出てくるかが判断の分かれ目になるでしょうか。
まとめ
氏名に関する登録の可能性をまとめると以下のようになります。
※「登録できる」に該当しても、他の人が同じ商品やサービスの分野で先に商標登録を取得している場合には登録できません。