外国での商標権の取得手続き~直接出願~

先日、「海外ビジネスを成功させようと思ったら商標権を取得すべし」と題して、海外ビジネスには商標権が必須アイテムであることをお伝えしました。

商標権は、基本的に、国ごとに発生し、その国においてのみ効力を有します。

海外で、商標の権利を主張したい場合には、その国で有効な商標権を取得しなければなりません。

今日は、海外での商標権の取得手続きの基本である「各国への直接出願」の手続きについて解説します。

国・地域によって制度は異なる

商標制度はほとんどの国に存在しています。

そのため、進出先の国で商標出願をすることは、ほぼ間違いなくできるでしょう。

ただ、それぞれの国や地域によって制度は異なってきます。

共通する点

まず、一般に共通する点は次の通りです。

●「商標」と「指定商品・サービス」を決めて出願すること

「商標」と「指定商品・サービス」を決めて出願するのは、ほぼ世界共通です。

●権利期間は更新可能

商標は、「自社の商品・サービスと他社の商品・サービスとを区別・識別するための目印」です。

会社が商標を使って商品やサービスを提供する限り、その商標は機能します。

このような商標の性質上、商標権は長期間にわたって使用されるので、商標権は、当初の権利期間が満了する際に更新手続きを取ることにより、半永久的に保有することができます。

権利期間は、10年の国が多いですが、7年や14年などを採用している国もあります。

相違する点

●商標の使用の証明の要否

アメリカやフィリピンは、「使用主義」という制度を採用し、商標の権利維持のために商標の使用の事実を宣誓しなければなりません。

虚偽の宣誓をした場合には商標権が取り消されるなどの不利益を被ることになります。

使用主義を採用する国では、商標を使用していることが権利の維持のために必須なのです。

使用主義の国に出願するときには、その国で商標を使用することを確認しましょう。

●相対審査の有無

商標制度が万国共通であっても、商標の審査内容は共通ではありません。

特に、相対審査(「先行して出願された他社の商標」に似た商標は登録しないという要件)を登録時の審査で判断しない国があります。

この制度を採用する国は、他社商標に似た商標も登録されるのですが、「問題があると思う当事者が異議申立をして解決せよ」との立場で、異議申立があった場合にのみ相対審査がされます。

欧州各国やEUTM(欧州連合商標)においては、登録時の審査において相対審査がなされません。

手続きの基本的な流れ

各国への直接出願は、下図のように、各国に個別に商標出願の手続きをします。

直接出願

海外の特許庁に自社から手続きできるの?

では、海外の特許庁に、直接、自社から出願書類を提出できるのでしょうか?

答えは、「できません。」です。

基本的に自国に住所地を有する者によらなければ手続きできないのが通常です。

そのため、日本の企業が海外への商標出願手続きをしようと思ったら、その国の代理人(弁護士や弁理士)に手続きを委任しなければなりません。

海外の国での商標出願手続きでは、代理人に頼らざるを得ないのです。

この点が、日本の企業が日本の特許庁に直接手続きできるのと異なります。

海外の代理人はどうやって探すの?

では、どうやって商標出願をしようとする国の代理人を探すのでしょうか?

日本にいながらにして海外の代理人を探すのであれば、インターネットで検索したり、日本貿易振興機構(ジェトロ)に聞いてみる手があると思います。

一方、直接会った人に頼みたい!というのであれば、INTA(国際商標協会)の年次大会に出席したり、インターネット情報等を基に複数の事務所をリストアップしてから、その国まで出向いて探すのもあるでしょう。

ただ、そこで知った代理人の費用やサービスの質については、自分で判断してコントロールしなければなりません。

海外出願を専門に取り扱う企業

一方、海外での商標出願を代行する企業もあります。

そういうところを利用すれば、海外の代理人を自社で探す手間はなくなります。

費用やサービスの質についても、その企業がコントロールしてくれることが期待できます。

日本の弁理士に依頼することは可能か。

また、海外の代理人と仕事上の付き合いのある日本の弁理士を介することでも、海外の代理人を自社で探す必要はなくなります。

弁理士であれば、費用やサービスの質のコントロールに加えて、日本の商標法との違いなどからその国の制度を的確に理解できるので、お客様にわかりやすく説明してくれることが期待できます。

そのため、そういった海外の代理人とのネットワークのある日本の弁理士を探すというのも有効な手だと思います。

日本の弁理士に依頼するときのポイントは、海外の代理人と付き合いがちゃんとある弁理士に依頼することです。

そうでないと、日本の弁理士は単なる伝書鳩としての役目しか果たせません。

さいごに

海外の国に商標権を直接出願しようと思うと、1か国であればまだしも、国数が増えると結構手間です。

特に、出願を希望する国の代理人を探して、指示をして、期限管理して、、、と結構大変です。

そのため、海外の代理人とのネットワークのある日本の代理人(弁理士)に依頼するのが安全だと思います。

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