会社名(商号)と商標登録

会社を設立する際に必ず決めるのが会社名(商号)です。

今日は、会社名(商号)と商標登録との関係をご紹介します。

会社の設立

会社の設立は、法務局に設立登記申請書を提出して行います。

・・・と、一言でいっても、実際には様々な準備・手続きがあります。

会社の設立手続きは、司法書士の先生方が専門なので、具体的手続きは、司法書士の先生に聞くことをお勧めします。

さて、この設立登記申請書において、会社名(商号)は、必須の記載事項です。

会社名がわからないと、事業主体がわからなくなるので、必須事項なのは当然のことと言えば当然です。

そして、法律上、同一住所に同一の会社名(商号)の法人が存在しなければ、会社の設立(法人登記)が認められます

つまり、世の中に同姓同名の他人がいるように、同じ会社名の他社も住所が異なれば存在する可能性があるわけです。

商標登録とは

商標とは、「誰の商品やサービスかを区別・識別するための目印」です。

そして、商標登録とは、商標を特許庁という役所に登録することを意味し、これにより権利としての商標権が発生します。

商標登録は、特許庁に出願(申請)すればすぐに認められるわけではなく、要件を満たすかどうか、審査がなされます。

最近は審査に10〜14ヶ月も掛かります。

審査では、「誰の商品やサービスかを区別・識別するための目印として機能し得るか」、「他人の商標権との関係で紛らわしくないか」、などが審査されます。

会社名(商号)と商標の違い

では会社名と商標はどう違うのでしょうか。

どちらも、会社が事業をする上で使用する表示という点では共通します。

でも、実は、それぞれその用途が異なります

会社名は、その会社自身を表します。

郵便の宛先に使う宛名としての会社名とでもいえばよいでしょうか。

一方、商標は、その会社の商品やサービスであることを示し、他社の商品やサービスと区別するために使用されます

簡単にいうと、商標は、誰が作ったものか、誰が提供するサービスなのかを示すものです。

用途から見る会社名(商号)と商標の違い

このように、会社名(商号)と商標には、用途において明確に違いがあるのです。

法人登記した会社名(商号)が使えない?

会社設立(法人登記)の際に、法務局は、設立登記申請書に記載された商号について、他社が商標権を持っているどうかを審査しません

また、商標の審査をする特許庁も、他社の会社名(商号)と紛らわしくないか、という点については、有名企業の名称である場合を除いては、基本的には審査しません。

つまり、自社の会社名(商号)や、会社名(商号)から”株式会社”などの会社の種類を示す文字を省略した文字について、他社が商標権を取得してしまう事案は、当然にあり得るのです。

そのため、会社を設立して、自社商品やサービスを示す表示に「会社名」や「会社名から”株式会社”などの会社の種類を示す文字を省略した文字」を使おうと思っても、他社が商標を取得してしまっている場合には、商標権の侵害に該当して、使えなくなってしまうことがあります。

過去には、堂島ロールで有名な株式会社モンシュシュ(現モンシェール)が、商標登録の存在を理由に、ケーキの包装などに自社名「Mon Chouchou(モンシュシュ)」を使用できなくなった事件があります。(大阪高裁平成25年3月7日判決 平成23年第2238号)

会社設立の前に

上記のような、会社名(商号)と商標との関係から言えることは、いたって簡単です。

会社設立時に、会社名(商号)の候補を考えたら、まず、その会社名と同一又は紛らわしい商標登録が存在しないか、確認することです。

せっかく会社を設立したのに、商標登録の問題で、自社名での事業展開に制限が課される状況は実際に見受けられます。

そこで、会社名の候補の時点で、商標の調査をするのです。

このひと手間を入れることで、会社設立後に、自社名を自由に事業上使用できるかどうかがわかるのです。

前述の「Mon Chouchou」の事件は、会社名を決める際に、自社の事業内容との関係で、商標調査をちゃんとしていれば、問題にはならなかったでしょう。

会社設立と一緒に商標登録をしよう!

また、商標登録は、誰でもいつでもできるので、会社設立時には他社が商標権を取得していなくても、後から商標権を取得されてしまうこともあります

これを防ぐには、超が付くほど有名企業になるか、他社よりも先に商標登録をするしかありません。

どちらが簡単かというと、それはもちろん「他社よりも先に商標登録をすること」です。

そのため、会社設立時に、法人登記と同じタイミングで商標登録も行い、将来にわたって、会社名(商号)を自社商品・サービスに使用する権利を取得することは重要なのです。

会社の設立(法人登記)ができたのだから、あらゆる場面での会社名(商号)の使用も問題ないと考えるのは早計です。

会社名(商号)が、自社商品・サービスと他社商品・サービスとを区別するための目印として使用されるのなら、商標登録をすることでビジネス上のさらなる安心を得られるのです。

私も、会社設立時の会社名の商標登録のお手伝いをさせていただくことがよくあります。

会社名を長く使おうと考える経営者の人こそ、会社設立と一緒に商標登録をしていると感じます。

商標登録は、実は会社設立時の必須アイテムなのです。

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