商標の国際登録の暫定的拒絶通報を放置したらどうなるの?

国際登録制度(マドリッドプロトコル)を利用した商標出願について、指定国の審査でその国の法令や規則に合致しないと判断されたものは、WIPO経由で暫定的拒絶通報(Provisional Refusal)が発せられます。

この通知を放置したらどうなるのでしょうか?

今日はこの点についてご紹介します。

暫定的拒絶通報の二つのパターン

暫定的拒絶通報は、指定国の特許庁(知的財産庁)における審査の結果、商標登録が認められない旨を通知するものです。

ただ、この通報を受け取った段階で商標登録をあきらめる必要はなく、指定国特許庁に対してこちらの意見を記載した書類を提出したり、出願内容を補正したりして、登録を目指すことができます。

暫定的拒絶通報には、次の二つの種類があります。

  • 全部拒絶(Total provisional refusal)
  • 一部拒絶(Partial provisional refusal)

全部拒絶(Total provisional refusal)は、その指定国における国際登録に係る商標の保護を全体として拒絶するものです。

暫定的拒絶通報の内容が一部の指定商品・役務を対象にしてる場合でも、国によっては全部拒絶として通報が発行されます(例えば、日本やアメリカ)。

一方、一部拒絶(Partial provisional refusal)は、国際登録に係る一部の指定商品・役務についてのみ保護を拒絶するものです。

応答せず放置したらどうなるのか

では、今日の本題、その暫定的拒絶通報を放置したらどうなるのか?

暫定拒絶通報が、「全部拒絶」なのか、「一部拒絶」なのかで、結論が異なってくることがあります。

全部拒絶の場合

全部拒絶の場合は、暫定的拒絶通報への応答をせずに放置すると、応答期限の経過をもって拒絶査定となり、その指定国における国際登録に係る商標の保護が認められなくなります。

全部拒絶を受け取った場合で、当該指定国での保護を望む場合には、その国の代理人を選任して手続きしなければなりません。

一部拒絶の場合

一方、一部拒絶の場合は、応答せずに放置した場合には、拒絶対象となった一部の指定商品・役務についてのみ保護が認められなくなり、残りの指定商品・役務については保護が認められます。

ただ、注意が必要なのは、一部拒絶の場合であっても、代理人の選任をしなければ、その指定国におけるすべての保護が認められなくなる場合があるといわれています。

この点、欧州加盟国全域に効力を有する欧州連合商標(EUTM)については、部分拒絶であっても代理人の選任が必須と言われていました。

ただ、最近私が担当した案件では、代理人を選任しない場合でも部分的に拒絶が確定するのみとの通知を受け取っており、実務上の運用が変わった可能性があります。

制度運用は、国によって違う上、同じ国でも実務が変わることがありますので、最新の情報を現地代理人に問い合わせて対応することをお勧めします。

さいごに

暫定的拒絶通報を受け取って、商標権の取得が不要であれば放置で構いませんが、一部拒絶で、拒絶された商品・役務については保護を諦める場合には、放置してよいのか、現地代理人経由で応答手続きを依頼したほうがよいのか、正直迷うところです。

もちろん一番安心なのは現地代理人に問い合わせて対応を相談することです。

ただ、現地代理人費用も掛かってくるので、出願している商標の重要度や費用、登録までの時間などを考慮して対応を決定する必要があります。

一部拒絶だから放置しても大丈夫とはいえないかもしれませんので、十分にご注意ください。

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