冷たいブランディング ~サーティワンかBaskin Robbinsか~
サーティワン アイスクリーム
私は昭和50年代の生まれなのですが、小学生のころ、最寄り駅の近くに「サーティワン アイスクリーム」がありました。
ただ、小学生男子の私が利用することはほとんどなく、漫然と、看板に「31」、と大きく書かれたアイス屋さんということを理解していた程度でした。
Baskin Robbins
それが、最近、街中にある「Baskin Robbins」というアイス屋さんを利用したときに、そのロゴの下に「サーティワン アイスクリーム」と書かれていることに気が付き、「あれ?あの「31」(サーティワン)か?Baskin Robbinsとサーティワンってどう違うの?
「サーティワン アイスクリーム」が「Baskin Robbins」という会社に買収されたのか?」と思ったわけです。
会社の沿革と商標出願
そこで、日本におけるこのアイス屋さんの沿革と同社の商標出願(商標を特許庁という役所に申請すること)の経緯を調べてみました。
以下はそれを非常に簡単に時系列に示したものです(会社の沿革は、B-R サーティワン アイスクリーム株式会社の会社情報に掲載された情報を抜粋し編集)。
1973年 | 不二家と米国のバスキン・ロビンズ社との合弁で日本法人を設立 |
1974年 | 第1号店を開店 |
1975年 | <商標出願> |
1991年 | 全世界で統一使用される新しいロゴを導入 |
同年 | <商標出願> |
2005年 | <商標出願> |
2009年 | 新ロゴ導入 |
結果わかったことは、「サーティワン アイスクリーム」も「Baskin Robbins」もまったく同じ会社のブランドで、中身(事業主体)に違いは無いということでした。
『「サーティワン アイスクリーム」が「Baskin Robbins」という会社に買収されたのか?』なんて思っていましたがそうではなかったようです。
日本でのブランド戦略の変遷
これらの情報から、同社は当初「サーティワン アイスクリーム」を主要なブランドとして位置付けて展開していたものの、1991年以降は、世界的なブランディングの観点から、「Baskin Robbins」を主要なブランドに変更して展開してきたといえます。
日本における「サーティワン」の認識を海外と同じ「Baskin Robbins」にシフトさせようとしてきたのです。
インバウンド需要が増える中、訪日外国人がアイスクリームを購入する機会も増えていると考えられます。
そのような訪日外国人に対して、米国を始めとする海外で広く認知されている「Baskin Robbins」ブランドで商品をPRすることは、ブランディング効率が良い戦略と思います。
一方で、Baskin Robbinsのロゴの下や近くに「サーティワン アイスクリーム」と書かれているのは、私のようなサーティワン アイスクリームを知っている世代に対しても、ブランドイメージを保ったまま「Baskin Robbins」を訴求していくための過渡的な措置であると思われます。
ただ、これによって、ブランドが二つ並んで、ブランドイメージの統一が少し阻害されているような気もします。
<ダブルブランドのような使い方>
また、2005年には新しいロゴが作られたにもかかわらず、店舗によってはいまだ1991年に導入されたロゴを使用している店舗もあり、ブランドイメージの統一の歩みがちゃんと進んでいるとは言えないかもしれません。
<旧ロゴを使用する店舗(2018/10/9現在)>
<新ロゴと旧ロゴの比較>
なお、Baskin Robbinsの“BR”ロゴのピンク色部分が「31」を表していることは、サーティワン アイスクリームの名残としてブランドの継続性を保っている一つの証といえます。
そんなことを考えさせられるサーティワン アイスクリーム(Baskin Robbins)との再会でした。