和牛の血統は守れるのか

昨年来、和牛の受精卵が中国に不正に流出する事件が報道され、いよいよ逮捕者がでる状況になっています。

ストロー状の容器でおよそ360本分の和牛の受精卵と精液を検疫を受けずに中国に持ち出そうとしたとして、今月、家畜伝染病予防法違反の疑いで逮捕されました。

NHK NEWS WEB https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190320/k10011855111000.html

逮捕につながったときの不正輸出は未遂に終わりましたが、それ以前にも不正輸出がされており、受精卵はすでに中国国内に流出してしまったとみられています。

今回、逮捕された容疑に適用された法律は「家畜伝染病予防法」です。

家畜伝染病予防法は、”家畜の伝染性疾病の発生を予防し、及びまん延を防止することにより、畜産の振興を図ること”を目的としており、この法律のみによって、和牛などの日本の畜産資源を保護するのは限界があるでしょう

すでに、中国国内に流出してしまった可能性が高いので、今後は、家畜の血統の流出を防ぐ対策と並行して、流出してしまった後の対策も考えないといけません。

海外から注目される日本の農畜産物

和牛に限らず、イチゴやブドウなどの農作物の種苗も海外への流出が問題視されています。

その背景には、海外での和食の知名度の向上とともに、畜産物や農作物の品質の高さも広く知られるようになったことがあるのでしょう。

これは素晴らしいことだと思います。

日本は農業でも、その品質が世界から注目されているのです。

もはや流出は止められないのか

日本の農畜産物やその血統・種苗は、長年培ってきた日本の財産です。

これが流出すると、日本の農作物が国内外の市場で他国の同種産品と競合する可能性が高くなります。

結果、回りまわって流出元の農家が困るのです。

この理解なしには、今後の流出を防ぐことはできません。

やっぱりブランドでの差別化でしょ

農畜産物の血統や種苗の流出が、もはや手遅れかもしれないとしたら、どうするのか。

やはりブランド化による差別しかないと思います。

もちろん、これ以上の流出を防止する手立ての可能性(新たな法律の制定や特許による遺伝子保護)はありますが、すでに流出した品種を改良して独自品種になればその手立てでは追いきれなくなります。

だから、流出対策と並行して、自分(地域)の産品のブランド化が必要になるでしょう。

農畜産物のブランドと聞いて、神戸牛(Kobe Beef)を私は思い浮かべました。

外国でも評価の高い食肉ブランドです。

でも、すべての農畜産物が神戸牛のように高級を志向する必要はありませんし、そうすべきではありません。

ここでの”ブランド”の意味は、”特長を磨き、その特長を際立たせて魅せること”です。

それがブランド化につながるのだと思います。

「言うは易し、行うは難し」ですが、国内外での農畜産物のブランド価値向上とブランド保護を、海外の産品との競合の中で進める時代になったと思う事件でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です